2017/05/29本の装幀の話


皆さまこんにちは。


今日は少し、本の装幀の話をしたいと思います。

本の装幀とはつまり、カバーのことでございます。

先日、「嵐にしやがれ」という番組をなにげなく見ていたところ、
日本でもっとも古くから出版プロデューサーと名乗り「年間100冊以上の書籍を生み出している」ことで有名な、吉田浩氏が登場され、あるお話しをしていました。

「読者は本を見て0.3秒で買うか買わないかを決めている」
「本の売れ行きを決めるのは、タイトルと装幀だ」

出版業界に携わっている方には常識の範囲内のお話かもしれませんが
業界ひよっこの私にとっては「やっぱりそうなのね!」「勉強させてもらおう」なんて
少し鼻息が荒くなるお話でした。

もっとも鼻息が荒くなったのは
番組の中で、
「この装幀は素晴らしい。私はこの装幀を考えた編集者は天才だと思う」
そんなコメントとともに紹介された、ある本を見た瞬間です。

太宰治著 『人間失格』
です。
(装幀はリンク先AmazonのHPでご確認ください)


なんで鼻息が荒くなったのかというと
学生時代、まさしく、私も「これほしい!!」と一瞬で購入を決め、それ以降
お気に入りの本に堂々ランクインした一冊だったからでございます。
(本は普段から直感で選ぶタイプの私ですが、その中でもこの本の決定は最短記録を誇ります)

変ないい方ですが、本の中身は普通に皆様ご存知『人間失格』そのもの。
漫画版でも、新章追加でも、サイン入りでもなんでもございません。

ですがこの本は、装幀をこのデザインに変更した、ただ「それだけ」で
1カ月に7万5000部を売り上げてしまったのです。
集英社文庫『人間失格』の累計発行部数は、1990年の初版から2007年5月までの、約17年間で37万4000部とのこと。
装幀が変更されたのは2007年6月末のことです。そこから1カ月で7万5000部ですから、そのすごさがお分かりいただけるはずです。

装幀のイラストに用いられたのは、かつて大ヒットをとばし、今なおファンの息が熱い 漫画『デスノート』で作画を手がけた、小畑健氏の「デスノート風イラスト」

文庫編集部の伊藤亮さんという方によって企画されたこの装幀が
消費者にいわゆるCDで言うところの「ジャケ買い」衝動を起こし
それまでは、増刷しても年に数千部の売上だった同著書の売り上げを
ドカーンっと変えたのですから、驚きです。

当時、私もデスノートは好きで漫画は全巻読破し、映画も観に行っていました。
小畑氏の作画は美しく、特に男前なキャラクターが私の心をキャッチしていたので
人間失格のカバーを見たときも、目が❤になったものです。
物語を読んでいても、主人公の葉蔵が、装幀に描かれたキャラクターの姿になって動き出すわけですから、男前の切ない物語として若く青い私の胸に刺さったわけです。
本を読んだ当時は高校生の夏休み。
男前好きの私は、装幀がきっかけで本を買い、人間失格を(葉蔵を)好きになりすぎて、
夏休みの読書感想文の宿題に熱をいれ熱をいれ......
よくある学校の特選みたいなものに選ばれるという。(笑)

そんな思い出もあり、
先日の嵐にしやがれは、私にいろんな感情を思い起こさせてくれる
素晴らしい回となりました。

最後はなんとなく話がずれてしまいましたが、
私も一編集者として、こんなワンダフルな装幀を企画してみたいものです。