「えー本日はお日柄もよく」 お決まりのセリフではじまったスピーチ。
祝いの席に集まった参列者たちは開始早々ウトウトモード。
(早く終わらないかな......)
誰もがそう思うその時間。
スピーチなんてどれも同じ。
私もそう思っていました。
この本に出会うまでは......
『本日は、お日柄もよく』
著者 原田マハ
出版社 徳間書店
あらすじ
主人公二ノ宮こと葉は、幼なじみの結婚式に出席したのをきっかけに、ある凄腕のスピーチライターと出会います。
スピーチライティングの世界に魅了された彼女は、弟子入りを決意。
その後、ほどなくして「政権交代!」と声高々に、選挙戦に臨む野党のスピーチライターに抜擢されます。
果たしてこと葉は無事、スピーチライターとしての大役をこなすことができるのでしょうか......
弊社はスピーチ専門の執筆集団ではございませんが、 "ライターのお仕事小説"ということで、以前から興味があり読んでみました。
結婚式や、お葬式など、誰もが一度は経験あるスピーチについてはもちろん、選挙スピーチまで扱っている本書は、
ライターの勉強としても役立ってくれました。
登場するスピーチは小説の中のものとはいえ、どれも素晴らしく、参考にしたい部分が多々ありました。
その中でも
"「今川君。 そう呼びかけても応えてくれる、君はもう、いないのか」(出典:原田マハ著『本日は、お日柄もよく』本文より)"
の一文からはじまる弔辞があります。
静まりかえった会場の中、こんな問いかけが聞こえてきたシーンを想像してみてください。
聴衆が、グッとスピーチの世界に引き込まれていく姿が見て取れるのではないでしょうか。
この後に続くスピーチで、亡くなられた方がどれだけ尊い人物であったかが
「光」と「陰」というキーワードを多用することで表されていきます。
光と陰は、つまり弔辞を送られる相手と送る側が「表裏一体」の関係であることを示しているのです。
このような「たとえ」をいれることで、聴衆にとってもお二人の関係がどのようなものであったかを、すっと読み取ることができるはずです。
そうしてスピーチに引き込まれた多くの読者の方が、涙されたとか。
私も作品を読み、主人公たちと同じ"言葉を扱う仕事"をする者として、 改めて言葉のチカラの偉大さを感じました。
いえ「改めて」というよりも逆に新鮮と言える経験だったかもしれません。
それは、言葉のチカラを操る側であれど、 普段は「言葉のチカラに影響を受けすぎないようにしよう」
などと、日常生活の中で、構えている部分が少しあるからです。
たとえば、電車の中吊り広告で週刊誌が『某ジャニーズグループの○○が、グラビアアイドル○○と密会!』
というような一文を掲載しているのを発見したとき。
イケメン大好きの私は「なんだって!?!?」と驚き、嫉妬に駆られ、あげく怒りまでわいてきて......
なんのこっちゃら週刊誌を買い求め、情報を集めに集め、必死でことの真偽をはかる(涙)
というような
"感情に動かされて、普段の自分ではしないようなことをする"
"ストレスを抱いてしまう"
そんな状況を「避けたい」と考えているからです。
また、週刊誌側がそのような"感情操作"を視野に入れて文章を作成していることはよくわかるので、
そこに「のってしまいたくない!」という意地もあるのです(笑)
ですから、小説の中であまりそのような邪念に邪魔されず、
純粋に読書を楽しみ、登場するスピーチに感動し、 「言葉ってすごいなぁ」と思えたのがとても嬉しかったです。
お仕事小説のおもしろさを実感した私は
第二弾として「ツバキ文具店」を読んでみたいな〜 と考えております。
また、 本を読んだら感想をお伝えしたいと思いますので
ぜひ、お手隙のときにはブログを覗きにきてくださいね。
※本書に登場する選挙演説もたいへんおもしろい内容になっています。
どんなスピーチが聴衆を惹き付けるのか......気になる方は、ぜひ
『本日は、お日柄もよく』をチェックしてください!